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2017年10月26日木曜日

誰かに任せず、共によりよく生きる。

今、「デンマーク・ガン協会(Kræftens Bekæmpelse)」による全国キャンペーン「Knæk Cancer」(意訳も含めば「ガンを蹴散らせ!」)がデンマークの各地で行われている。近所のスーパーでも、レジの横でピンバッジが販売されている。その他、ウェブでも企業の協賛による寄付つき商品が販売されている。要するにキャンペーンとは資金調達のキャンペーンであり、そうして集められた寄付によって、年間を通して多彩な活動の原資となり、公的資金に依存しない事業が展開されている。

デンマーク語ではボランティア(Volunteer)をFrivillige、ボランティア団体のことをfrivillige-foreningerと言う。ガン協会では、プロジェクトごとにウェブサイトを開設しており、そのうちボランティア関連のURLは「https://www.frivillig.dk」である。そして、トップページには「年間45000人のボランティアが共通の目標を持って活動している」とアピールされている。名実共にデンマーク最大のボランティア団体と言えよう。

ガン協会のボランティア活動における共通の目標とは「ガンを罹患した後に、よりよく生きる」ということである。そのため、昨日と今日は各地のカウンセリングセンターのオープンハウスがなされており、妻と共にデンマーク第3のまち、オーデンセまで足を運び、大学病院の敷地内に建ててられたセンターにお邪魔した。木がふんだんに用いられた、あたたかい内装で、扉を開けるなり、ボランティアからパートタイムのスタッフになった方に歓待をいただいた。そして、ボランティアの方々が準備された手作りパンなどをいただいて、マインドフルネスのワークショップ(簡単に言えば瞑想)を受け、国内7つの拠点の一つで日常的になされている活動を追体験させていただいた。

デンマークでは2001年からの中道右派政権による自由競争(いわゆるNPM)の推進と大規模な地方自治改革により、社会福祉の政策に変化がもたらされてきたという。また、2007年1月1日に行われた自治体の広域合併により、日本の言い方で言えば都道府県にあたる13のアムトが道州制の導入で5つのレギオーンに、市町村にあたる270のコムーネが98に再編された。5月22日にお目にかかったLars Skov Henriksen先生らの論文によると、その結果、地方自治体による非営利団体への助成プログラムは、営利団体・非営利を問わず広く民間の手による社会サービス委託契約へと方針転換がなされた、という(Lars, et al., 2012, p.471)。オーデンセの後、ロスキレというまちでの「ガンを蹴散らせ!」野外イベントを見学しに行ったところ、会場となったロスキレ大聖堂前の広場は国営テレビの生中継などもあって大変な人だかりとなっており、公共サービスを受ける人たちの社会参加を意味する「ユーザー・デモクラシー」の象徴的な場面として受けとめた。


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